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語ることって大事

【短い感想】『オリエント急行殺人事件』(2017)

最近、短い感想とタイトルを打っておいて全然短くないので、最初に手短なまとめを書くようにしようと思います。

 

1、映像がよかったというより、舞台の装飾や小道具がよかった。お金がかかっているのがよく分かった。映画にとって大切な贅沢感はあった。

2、ただし、ポワロ役兼監督のおじちゃんの自己満映画なんでは、と思うくらいなんもなかった。ポワロしかなかった。

3、最後の晩餐を模したシーンがあったけど、白けた。

 

 

 

はい、『オリエント急行殺人事件』ですね。私は、原作も過去の映画化作品も見ておりませんので、まったくの初見でございました。魅かれた理由は、英国らしさがきらびやかな映像美によって表現されているのではという期待感から。

まず、疑問なのは、何故「オリエント」なのかという点だね。これは原作者がよくオリエント急行に乗って旅をした経験からきているのだそうだ。

オリエント急行の運行区間はカレーからイスタンブール間で、まあイギリスからオリエント(この場合中東)の入り口まで運んでくれる列車なわけだな。作中赤いマントを「キモノ」なんて言ったり、殺されたデップもオリエンタル(東洋の骨董品)を扱う商人だったりと、異国趣味的な描写があったね。1930年代はまだ欧米列強の植民地支配が健在な時分なので、そういう異国趣味もまだまだ需要があったんだと、そういうことなんでしょうね。ただ今となっては、ひとつの時代考証に過ぎないんで、それいる?感はあった。まあタイトルが「オリエント」だしっていう言い訳ってことかな。それにしては描写が貧弱すぎじゃないか?赤いマントなんてこれ着物じゃねーし。

 

作中で支配人の女たらし男(名前は忘れた)が言ってたように、列車の旅は、たまたま乗り合わせた乗客たちがその場限りの出会いを楽しむ場でもある。そんな旅の醍醐味についても触れられていたね。でも、今回乗り合わせた乗客たちは、主人公ポワロと女たらし男とデップ以外は顔見知りだったわけで、そんな旅の醍醐味なんてクソほどもなかったわけだが。それに老人ポワロはマイビューティー一筋で、女との危険なランデブーなんて起こりそうもないわな。つまり、列車旅という舞台装置は、殺人事件のミスリードの役割になってるわけだね。こいつらは初めて出会ったはずの人々だ、という思い込みを逆手に取ってるということです。

個人的におっ?となったのは、イスタンブールへ向かう船の甲板で、リドリーがスナップカメラを首から下げてたことだね。たぶんライカ?じゃないかと思うんだけど、これも旅のお供として重要なアイテムですね。作中で活かされることはなかったんで、何かの伏線では全くなかったですけど。

 

まあ、旅という舞台設定はよくできてたとしましょう。じゃあ、本編はどうだったかというと、正直微妙だよね。見終わってからネットでいくつか感想よんだけど、ポワロの俳優がこの映画の監督もやってたんだね。それを聞いてから振り返ると、唯の自己満映画じゃん、って言ってた人の感想がかなり納得でした。下のブログです。

 

ameblo.jp

 

 

あと、終盤にダヴィンチの最後の晩餐を模した構図のシーンがありましたね。かなり無理やり感満載だったので、私的には萎えポイントでしたが。真ん中の主犯だったおばちゃんが大きな黄色い襟の服を着ていて光輪(聖人の頭の後ろにある光の円盤)っぽくなってましたね。

 

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出典:https://i0.wp.com/thewire.in/wp-content/uploads/2017/04/last-supper.jpg?fit=754%2C393&ssl=1

 

だたダヴィンチの最後の晩餐は、光輪が描かれてないんだよね。ダヴィンチは、最後の晩餐を描くときの慣例をかなり無視してます。

それに光輪を描く場合、慣例では裏切り者のユダ以外の弟子たちの頭に描きます。中心のキリストだけに光輪を描くのも結構珍しいと言えるでしょう。ドメニコ・ギルランダイオの最後の晩餐なんかがそれですね。下の画像。ちなみに、手前で尋問されてるようにしか見えないハブられ男がユダなんですが、この配置は慣例通りです。(´∀`)アハハ

 

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出典:http://kunig.main.jp/wordpressks/wp-content/uploads/2017/11/最後の晩餐2ogniss.jpg

 

つまり、主犯のおばちゃんが聖人並の心の持ち主だと言いたいんでしょうけど、これ、キリスト教圏から見ても微妙な表現なんじゃ?

そもそも、殺人をなんやかんや肯定してしまうというとんでもない映画だったからね。見てて、いやそりゃいかんだろ・・・と思った次第。